デザイナは作るだけでなく、作った作品の権利「著作権」に関しても詳しい知識を持たねばなりません。
著作権はその作品を制作した本人に権利が発生します。間違っても制作を発注した企業側がその後の利用を自由にしていいものではありません。制作するには制作費が、増刷・応用・N次制作するには著作権料(ロイヤリティ)が発生します。
かくいう私も若いころに、著作権で失敗した苦い経験を持っています。
1度目は、著作権がどんなものであるかもわからないまま、何気なく描いた「捨てカット(文章の隙間を埋める挿し絵)」でした。そのころはそこまでチェックしている企業のあり方に感心したものです。
2度目は<ディズニー社>からでした。 もちろん著作権料を払ってのキャラクター利用&パッケージでしたが クレームがついたのは、なんとその商品を掲載したカタログでした。 商品カテゴリーを示す、カタログの中表紙にディズニー・キャラクターが大きく映り込んでいるデザインを採用していたからです。 デザイン担当は私ではありませんでしたが、当初はなぜクレームがつけられたか理解できませんでした。
ディズニー側の言い分はというと「著作権料が支払われているのは 商品と商品パッケージのみであって、カタログの中表紙への記載は含まれていない」とのこと。高い原画料金にプラスしてロイヤリティーまでキチンと支払っているこちら側としては納得がいかず、そのことを反論しました。するとディズニー側は「カタログの中表紙にディズニー・キャラクター利用されることで、関係のない他の商品までもが ディズニーの印象によって商品価値が高められ、販売実績が伸びるからだ。だからこそその伸び分のロイヤリティーが発生する」とのこと。 カタログ経由の売り上げのなかから相当分のロイヤリティーを支払うか、掲載を取りやめるかの2択を迫られ、結局、中表紙を別デザインに切り替えました。当時はスゴク腹立たしかったのですが、いまでは著作権のことをよく勉強させてもらったので、納得しています。
著作権の侵害は犯罪でありながら、被害者である著作権者が告訴することでしか侵害者を処罰することができません(親告罪であるため) 欧米の大きな企業なら弁理士・弁護士が成果報酬制で違反を見つけだしますが、日本ではそこまでするところは少ないようです。それゆえ個人のクリエイターは自らの著作権をきちんと主張し、守っていくべきでしょう。
「ちょっとした腕試しのつもりで…」「あいた時間にアルバイトできないかしら…」「一度でいいから自分の描いたイラストが商品になることを経験してみたい」などなど、イラストレーターという職業にあこがれる人たちは沢山います。もちろんそんな人たちが制作したものでも著作権は発生します。なぜなら著作権というのは制作者(クリエイター)に発生する権利で、あなたがその作品の作者であることを意味するからです。
最近ではそういったあこがれの気持ちを利用して、イラストを登録さえすれば仕事がまわってくるような表現をしたサイトが増えています。けれど「著作権は登録したサイト側に属します」といったただし書きがある場合は注意が必要です。とは言ってみても、まぁほとんどがそうですが…。 本人は「今後のための実績作りとして」のつもりでも、著作権を登録サイト側に属することを認めて作った作品は、もうあなたの作品ではないからです。どんなに心をこめて作ろうが、徹夜をして作ろうが著作権を持っていない作品を自分の作品だと主張することはできませんし、逆に訴えられるケースさえ考えられます。
著作権は作者の権利ですが、著作隣接権は著作物を出版したり、流通させたりする権利です。
なので出版されている書籍を無断で、複製販売すれば著作隣接権で訴えられます。隣接権は制作会社や印刷会社・出版社がもっているからです。ですが、著作権に関して相手が大きな企業だからといって安心していたら酷い目にあいます。ほとんどの、著作権に無理解な一般的な企業・自治体では、制作費さえ支払えばその創作物の権利が自社にあると勘違いしがちだからです。超一流と呼ばれる出版社でさえ発行部数を誤魔化し、著作者に支払うロイヤリティーを搾取していたという内部告発のニュースも耳新しいはず。私としては、連載されている作品が映画化されたりするときに作者の名前とともに著作隣接権しか持たない出版社や媒体側が権利を併記する風潮にも疑問を感じています。クリエイタの「産み出す力」と、媒体側の「増産する力」が 同じ扱いを受けているのですから。
文化庁 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/
ここは著作権法をくわしく説明してくれています。
また、わかりやすいよう「マンガでわかる著作物の利用」みたいなコンテンツも用意されています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/著作権
狭義の著作権は、日本国憲法でいう財産権に含まれる。これは著作物を財産として利用する権利である。ただし、著作権法ではこのような著作財産権の他に、著作者人格権、著作隣接権に関する規定を設けることも多く、これらを総称して広義の著作権と呼ぶこともある。
・著作者人格権は、著作者の人格的権利であり、主に作品の公表、作者名の表示の有無、作者の名誉声望などを害する作品の改変などについての権利である。
・著作隣接権は、著作権が対象としている著作物に密接に関連している権利であり、財産権と人格権を含む。作曲家によって制作された楽曲は著作物であり、著作者である作曲家は著作権を有しているが、この楽曲を演奏する演奏者やそれを録音するレコード製作者、コンサートを放送する放送事業者は著作物の著作者ではないが、著作物に密接に関わる活動を業としている。このような著作物の利用者に発生する権利が、著作隣接権として扱われる。
・著作権は特許権、意匠権、商標権などと並ぶ知的財産権の一種である。
・特許権は発明に対する保護を与えるのに対して、著作権は「表現」すなわち著作物(「思想又は感情」の「創作的」な「表現」であり、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの)に対する保護を与える。
ここで、「創作的」については、表現者の個性が表れていれば足り、新規性や独創性までは要しないとされる(判例・通説)。なお、アイディアは一般的に保護されない。 美術的分野では、意匠権は工業デザインの権利を保護するものであるが、著作権は原則として美術鑑賞のための作品などに適用され、実用品には適用されないとする。但し、この境界線は必ずしも明解ではなく、美術工芸品は双方の権利が及ぶとする説もある。また国によっては意匠法と著作権法をまとめて扱っている場合もある。 また特許権、意匠権、商標権などは登録が権利発生の要件であるが(方式主義)、日本法においては著作権は著作物の創作をもって発生し、登録は不要である(無方式主義)。著作権の登録は、第三者対抗要件に過ぎない。
http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime8.html
著作権侵害・罰則など 権利の侵害 著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権侵害となります。ただし、許諾なく使える場合に該当するときは、無断で利用しても著作権侵害にはなりません。 また、著作者に無断で著作物の内容や題号を改変したり、著作者が匿名を希望しているのに著作物に勝手に本名をつけて発行したりすれば、著作者人格権侵害となります。 さらに、無断複製物であることを知っていながら当該複製物を頒布(有償か無償かを問わず、複製物を公衆に譲渡・貸与することをいう)したり、頒布の目的で所持する行為や、著作物に付された権利者の情報や利用許諾の条件等の権利管理情報を故意に改変する行為なども権利侵害となります。
1. 民事上の請求
上記のような権利侵害の事実があるときは、権利者は侵害をした者に対し次のような請求をすることができます。こうした請求に当事者間で争いがある場合には、最終的には裁判所に訴えて実現してもらうことになります。 侵害行為の差止請求 損害賠償の請求 不当利得の返還請求 名誉回復などの措置の請求
2. 罰 則
著作権侵害は犯罪であり、被害者である著作権者が告訴することで侵害者を処罰することができます(親告罪)。著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定めれれています。 また、法人などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、3億円以下の罰金となります。 さらに、平成24年10月の著作権法改正により、私的使用目的であっても、無断でアップロードされていることを知っていて、かつダウンロードする著作物等が有償で提供・提示されていることを知っていた場合、そのサイトから自動公衆送信でデジタル録音・録画を行うと、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられることになりました。 なお、「懲役刑」と「罰金刑」は併科することができます。