アメリカのローランド・ホールが提唱した 『消費者が広告をみてから実際に<購買>という行為に移るまで』を あらわした行動様式・心理過程で、
Attention=注意 →テレビや店頭での広告に目がいく
Interest=興味・関心 →何だろうと興味を持って
Desire=欲求 →欲しいと思う
Memory=記憶 →商品名を覚えておいて
Action=(購買への)行動 →買えるようになったら買う
…という消費者の行動様式を上記5項目に分類し、各頭文字をとって"AIDMA/アイドマの法則" をいいます。 M/memoryのかわりにC/conviction=確信に変え『アイドカの法則』とよぶことも。
また5段階ではな くAttentionを「認知段階」、Interest、Desire、Memoryを「感情段階」、Actionを「行動段階」> と3段階に要約する説をとなえる人もいます。商品デザインやパッケージデザイン業界ではこの5つのキーワードのあとに <・Repeat =再購買 ・Custom(routine)=習慣 ・Fan=ファン化> といったマーケティング要素を付け足すことも。どちらにしても広告と消費行動の関係性を考える際に基本となる考え方です。もちろん美術系専門学校や美大・芸大でもよく授業に用いられるコンセプト/消費行動の基本として習います。
しかしながら近年、ネット通販がほぼ日常的なものとして受け入れられるようになり、広告をみて欲しいと思えば誰もがクリックひとつで購入できるパターンが定着しつつありますので、Memory部分が抜けがちであるという特長も見逃せません。
アイドマの法則はたしかによく知られた通説でさまざまな授業で教えられていますが、あくまでも仮説であって決定的な事実ではありません。似たような法則はたくさんあります。(下記参照)
できれば「そんな考え方もあるんだ」という分析視点のひとつとして、自社商品の価格帯や顧客ニーズ・嗜好の差によって市場にアプローチする販売傾向を読み解きや、PDCAの精度を高めていく参考例として利用すべきでしょう。
たとえ上記のどの仮説であってもAttention/注意にみられる認知や Interest/興味・関心といった好奇の感情段階、商品購入のトリガー(引き金)となる段階を省略したものはありません。この商品の売れ行きを左右する段階を担っているからこそ、グラフィック・デザインは商業デザインとよばれるのです。
グラフィックデザインが Attentionや Interestを引き出す構成要素のひとつに、キービジュアルもしくはアイキャッチャーと呼ばれるものがあります。それは笑顔のアイドルをバストショットで紙面一杯にアップしたビジュアルだったり、女性の水着写真であったりしますが、同時に沢山の企業名が同時に頭の中に入ったときに差異化として求められるキャラクタデザインやC.I.(コーポレート・アイデンティティ/ロゴマーク)なども同等の役割を果たします。
また良いレイアウトデザインや、インパクトの強いビジュアル・イラスト・図・コピーなども記憶に残りやすいため、アイキャッチャーとして利用されることあります。
"人はそれぞれの価値観でものごとを見てる"ことを利用して、ちょっとした心理的な操作で"記憶(memory)"に影響をあたえるテクニックがあります。
まず想像してほしいのは映画を二人で観たときのことです。(同性同士より男女ペアのほうが違いが顕著になります)一緒に映画を観たあとで話をすると全然違う受け取り方、違う所をみていることがわかります。隣りあって見てたはずのワンシーンであっても、バックのポスターがおもしろかったとか、ヒロインの服が良かったとか男性が全然覚えてないところを見てるのが女性です。
下記の写真で試してみてください。
後で指摘されるとビックリするような秘密が写真にはあります(最下部で説明します)
もちろんこのサイトの管理者である私もみごとにひっかかりました。
またビールのTVCMでも、男性は出演している女性タレントの顔や足、とくに水着の胸元に目が吸い付けられてしまいます。(最近では若者のアルコール離れの影響があり、女性顧客を開拓するため、男性タレントを多く登用する傾向がみられます)
ここで大切なのは、なにげなく「いいなぁ」程度に見入っている女性タレントの水着写真とともにかならず企業ロゴが入っていることです。人間の無意識や深層心理というのは面白いもので、接続語や主語が抜ける性質があります。
"あ、あの女の子イイなぁ"と思いながら、いつしか "あの女の子・○○ビール会社、イイなぁ"→ "○○ビール、イイなぁ"につながるんです。いわば一種の洗脳というか、一時流行したマインドコントロールにも似ていますが<吊り橋効果>や<驚きの眉効果>にも同様の効果があります。
またTVCMは好感度の高いタレントを使って、CM自体にストーリー性を持たせたりバージョン違いを用意しますが、これもCMが当たり前になるまで繰り返し流す<ザイオンス効果>を狙っています。ただし上手に利用しないと、逆効果だってあり得ます。そのあたりの例は後述する<ザイオンス効果>の説明でご紹介しますね。
おなじように「門前の小僧習わぬ経を読む」といって幼少期は感覚器官としての聴覚が優先されていて、大人になると視覚が優性的になることを利用すれば、子ども向け商品はどう告知すべきか、もうおわかりですよね。
CMを流すタイミングも重要です。一日のどの時間帯に流すか、1年のどのタイミングで流すか。これは時代によっても変化しますから注意が必要です。たとえば昔はランドセルのCMはお正月から入学式まえまでがピークでしたが、最近ではおじいちゃん・おばあちゃんと同居していない世帯の増加とともに、夏の帰省時期であるお盆にあわせてCMの放映を前倒しする傾向が高くなっています。
CMはデザイナにとって学ぶべき点の多い貴重なサンプルなんです。
◉写真の秘密(水着女性のうしろには、ある動物が一緒に映っています)